【Next CMO育成事例】新卒入社でマーケティング責任者へ~TABIPPOの組織と戦略のつくりかた~
目次
今回は、「マーケティングイネーブルメントサービス」を導入頂いた、株式会社TABIPPOのマーケティング責任者として活躍する上野隼さん。執行役員CHROの浦川拓也さんのお二人にインタビューを実施しました。
お二人のキャリアやマーケティングの組織づくり、サービス導入を通じて起きた変化について対談形式でお伝えしていきます。
マーケティングイネーブルメントサービスとは
Next CMO候補(未来のマーケティング責任者候補になる人)を育成し、マーケティングの成果創出に向けた組織基盤を構築するプログラムを提供するサービスです。
※インタビュー内容を要約したグラレコ(マーケティング組織の変化)
今回は、新卒入社で社歴は1年近くの上野さんに対し「Next CMO(未来のCMO候補)」としての戦略・組織の仕組みづくりをご支援させていただきました。この組織づくりのプロセスを、これからマーケティング組織を強化する方にお役立て頂ければと思います。
※プロジェクトキックオフ時の写真(画面右上:浦川さん/中段右側:上野さん)
1. マーケティング組織をよりよくするために
自己紹介と、TABIPPO内での役割をお願いします。
上野さん学生時代に合計2年間、TABIPPOでインターンを経験しました。1年目は、旅人に特化した就活支援サービスに携わりました。当時の責任者である浦川のもとで、YouTubeのコンテンツ制作や動画編集などを担当し、コンテンツマーケティングに関わっていました。
その後、大学を休学しデンマークに留学し、帰国後に再びTABIPPOのインターンに復帰しました。元々マーケティングに関心があり、大学も経営学部のマーケティング学科を専攻していたのですが、インターンシップ2年目はPOOLO3期のマーケティング設計に関わり、カスタマージャーニーの作成やCRMの設計、コンテンツ制作などに従事しました。
卒業を間近に控えたタイミングで、TABIPPOへの入社を決めた理由は、2年間インターン生として過ごす中で、旅への原体験を非常に強く感じたためです。また、仕事をしながら旅ができる職場環境も非常に魅力的でした。
また、インターンシップが長かったので、入社後どのようなポジションで何をすべきかが明確なことも決め手の一つです。インターンシップを通じて得た経験が活きると確信していたのでTABIPPOに就職しました。現在は、メディアマーケティングチームの責任者として、事業横断的にマーケティング戦略の策定やコンテンツ制作を行っています。
浦川さん学生時代に大学を休学し、世界一周の旅を経て、学生インターンとしてTABIPPO主催のイベント責任者に2年間従事したことがTABIPPOとの出会いです。
学生時代に組織の代表やバイトリーダーとして、組織を効果的に動かすことの面白さに気づき、アーリーステージの企業で事業や組織を仲間と共に築く経験をしたいと考え、新卒では人材系の企業に入社しました。
求人広告の法人営業と新卒採用担当を兼任し、約1年働いた後TABIPPOの創業メンバーに誘われてTABIPPOへ転職しました。
転職後はおそらく、TABIPPO社員の中で最も多くのポジションを経験したと思います。入社した当初は法人営業として自治体や政府観光局向けの観光マーケティングの企画提案を行っていました。その他には学生時代に関わっていたイベントのスタッフ統括を社員の立場で担当し、新規事業の人材紹介や新卒紹介サービスの立ち上げにも携わりました。コロナの影響でオンライン化が進む中、コミュニティイベントなどの事業も組織化し、仕組みを作り上げました。
TABIPPOの事業について教えてください。
浦川さん主に2つの事業を展開しています。ひとつは法人営業で、主に政府観光局や行政関係、国内地方自治体の観光課などのクライアントに対する観光マーケティング支援です。コンサル営業や企画提案営業が含まれます。
もうひとつは、コミュニティ事業です。学生や旅が好きな人を対象にしたPOOLOをはじめとしたコミュニティを運営しています。BtoB事業とコミュニティ事業は相互にシナジーを生み出すように設計されており、コミュニティを活用したマーケティングで観光業界を盛り上げることを目指しています。
現在のマーケティングの組織体制について教えてください。
上野さん私たちのチームは、BtoBとBtoCの事業を横断的に支援する「メディアマーケティングチーム」と呼ばれる組織です。マーケティングに加えて、toB事業のCS・コンテンツ制作等も含まれています。
メディアマーケティングチームは現在約15人のチームで、うち5名が社員です。また、TABIPPO全体の社員は12名なので、私たちはかなり大所帯のチームですが、他のチームとも兼任しているメンバーも多いです。
私がいわゆるマーケティング領域に携わっており、残りの4名はコンテンツ制作やクリエイティブの制作、SNS企画・運用、広報PRなど、それぞれを担当しています。
現在の組織に至るまでのマーケティング組織の課題はどのようなものでしたか?
浦川さん当初、マーケティングチームは存在しておらず、2つの事業部の担当者が試行錯誤しながら売上向上を図っていましたが、あまりうまく機能していないことが大きな課題でした。
メンバーがそれぞれの得意分野や興味を活かせるよう、分業体制を整えることで事業全体の成果が出ると考えました。この時、マーケティング機能を切り分けて、マーケティングに関心がある人やキャリアを積みたいと考える人たちでコンテンツマーケティングチームを作りました。
私はコーチングの経験がありましたので、メンバーが持つ才能や適性に気づきやすく、もっと各人が活躍できる方法を常に考えていました。人と人がうまく機能し、互いの弱点を補い合いながら成果を出すチーム・組織を目指しています。
上野さんの配属は新卒としては珍しいケースだと感じましたが、どのような意図があったのでしょうか。
浦川さんおっしゃる通り、一度営業を経験した上でマーケティングに携わるのが順当なキャリアだと理解しています。
TABIPPOの組織規模だとマーケティングに関する取り組み実績が多くなく、一度マーケティングの役割を明確に設定し、着実に施策を進めることが最も重要だと考えました。
人件費や部門予算を潤沢に確保できる状況であれば、ハイスキル人材を採用できることが理想かもしれません。しかし、これから戦略や組織を育てていくというフェーズにおいて、インターンとして働いていた上野がマーケティングに適性・関心があったことから、最もバランスの良い着地点だと考え、現在の配属に至りました。
上野さんは役職の垣根を超えてコミュニケーションをとる必要があるポジションにいらっしゃると思います。そこで大切にしてることがあれば教えてください
上野さんTABIPPOが大事にするフラットな組織環境では、わからないことがあれば誰にでも「教えてください」と質問しやすいという利点があります。
新卒でマーケティングに携わり、知らない知識や初めての業務も多い中、いろんな部署のメンバーから多くのことを教えてもらえる環境は大変ありがたいと思っています。
役職ごとにコミュニケーションの壁ができてしまうことも多いのでしょうか、TABIPPOさんが組織をフラットさを保つための秘訣を教えてください
浦川さん前職がフラットなコミュニケーションを推奨するカルチャーだったので、TABIPPOに入社した際、あまり役職や上司・部下のような明確な壁を作りませんでした。
自身は無意識の内にフラットなコミュニケーションをとっていましたが、やはり権限で見られない情報や参加できない会議など、社内での格差を感じさせるような雰囲気に違和感を覚えました。そういった小さな違和感を少しずつ改善するようなアクションを続けた結果、今のようなカルチャーの組織になりました。
2. 組織づくりと戦略設計の課題とは
メディアマーケティングチームの業務内容について先ほどお伺いをしましたが、KPIや目標はどのように立てているのでしょうか?
上野さんチーム立ち上げ当初はメディアでのコンテンツの数やSNS投稿数などの数字を追っていました。しかし、最近ではコンテンツ量や発信以外の数値もチームや会社のミッションに連動するよう、徐々に変わってきている段階です。
来年度(23年度)の事業計画を練る中で、メディアマーケティングチームの在り方についても見直しを行っています。具体的には、コンテンツ制作とマーケティング戦略を同じチーム・同じKPIでマネジメントすることが困難になりつつあるので、チームを新しく作るという意思決定がありました。そうすることで各チームのミッションがより明確になった上で、具体的なKPIを設定することで、組織全体がより効果的に目標に向かって進むことができると考えています。
メディアマーケティングチームの事業計画は上野さんが作成しているのですか?
上野さん浦川のフィードバックを受けながら進めています。私は主にメディア制作の事業計画をメインで考えていて、マーケティング領域は、BtoB・BtoCで事業それぞれに合わせて、各事業責任者とチューニングしながら進めています。
現状、すぐにBtoB・BtoC事業でそれぞれにカスタマイズした施策を遂行できるかというと、現実的ではないので優先度をつけながら進めています。今期は主にBtoB事業に焦点を当てて戦略設計に取り組んでいます。
BtoC事業では、事業責任者とマーケティング施策レベルでの議論をしています。BtoCの事業部内で戦略設計と施策の実行が完結している状態です。将来的には私もBtoC事業の領域にも携わり、全社横断のマーケティングを見据えた取り組みができるようになることが、個人的な目標として据えています。
参考:マーケティングイネーブルメントで整理したKGI・KPI・KSFの考え方
TABIPPOさんならではの施策の課題と工夫について教えていただけますか?
上野さんコミュニティ作りにおけるマーケティングは、創業当初からTABIPPOならではのノウハウが確立されている状況です。
一方で、BtoBマーケティングは社としての取り組み実績が多くなく、事例も少ないという課題がありました。BtoBのマーケティング戦略を策定する土台の整備や、仮説を立ててスモールスタートで施策を実行していくというサイクルを素早く回しているという工夫があります。
今回は、BtoBマーケティングの仕組みをつくることがマーケティングイネーブルメント受講の目的でもありました。
参考:TABIPPOの今まで積み重ねてきたことを土台に、BtoBマーケティングの仕組みを設計
3. マーケティングイネーブルメントを受講して
マーケティングイネーブルメントはBtoBマーケティングの戦略策定で取り組んでいただいたのですね。率直に受講した感想を教えてください。
上野さん受講の機会を得られて本当によかったです。 マーケティングイネーブルメントに、Next CMOを輩出することや、マーケティングチームの仕組みづくりというミッションがありますが、「どのようなマーケターになりたいのか」という私自身のキャリアを掘り下げていただくセッションがあり、ここまで寄り添ってご支援いただけるのか!と、非常に驚きました。
プログラム全体を通して、関わってくださる皆さんが、マーケティングの広い概念やフレームワークの説明に終始せず、「TABIPPOだったらこうだよね」と、抽象度の高い概念でも私たちの事業を代入して教えてくださったり、時には一緒に戦略について考えてくださりました。非常に近い距離でご支援いただけましたので、フィードバックにも納得感がありましたし、より自社で検討すべき打ち手への理解が深まったと思います。
マーケティングイネーブルメントの受講後に変化はありましたか?
上野さんマーケティングとは、自社の想いを言語化し、正しく伝えて浸透させることに価値があり、結果的に売上に繋がるというのがひとつの気づきです。
また、TABIPPOでは同じ仕事をしているメンバーがほとんどいない状況なので、改めて全社での共通認識を持つことも重要だということもわかりました。
私自身がBtoBマーケティングの実務経験や知識をこれから伸ばしていきたいと考えていたので、マーケティングイネーブルメントで学んだこと自体に大きな価値があると感じています。マーケティングイネーブルメントでの経験を通して、他部署のメンバーから施策の相談を受ける機会も増え、社内における私へのマーケティングに対する信頼感にまで繋がっていると実感しています。
参考:マーケティングイネーブルメントで実践する全体設計の例
浦川さんから見て、マーケティングイネーブルメントの受講前後で上野さんの成長を感じられた点はありますか?
浦川さん僕は、CMOの役割を定義していただいたことが、マーケティングイネーブルメントの受講に際してとてもよかったことだと思っています。
TABIPPOでは経営とマーケティングの繋がりを重要視しているため、上野には施策を検討する際に、経営とマーケティングの役割を明確化することをマーケティングイネーブルメントの受講を通して求めていました。
重要なのは、意思決定や判断軸に経営視点が入っていること。経営視点とは、マーケティング施策の他に、財務や組織マネジメント、経営課題の把握なども含んでいます。そういった視点でやりたい施策や戦略設計を明確にできるかが大切だと感じており、その点ではかなり受講前後で大きく成長したと感じています。
具体的に「経営とマーケを繋ぐ」というキーワードの中で、上野さんが意識されていることを教えてください
上野さん社内の「チャレンジリーダー制度」に参加したことが直近の具体的なアクションです。「チャレンジリーダー制度」とは、一般社員がチャレンジワークとして週次で開催されている経営レイヤーのミーティングに1年間を通して参加し、経営視点を養うための制度です。私は2023年1月からチャレンジリーダーとして参加して、経営とマーケをつなぐためのアクションのひとつとして実践しています。
経営会議では、PLや部門ごとの数字だけでなく、各部門から上がってくる施策の優先順位などを考慮するという視点が広がりました。チャレンジリーダーになったことで、自分以外のTABIPPOメンバーが携わる業務への解像度も高くなったように思います。
参考:マーケティングイネーブルメントで大事にしている、マーケティングと経営を連動させる考え方
4. Next CMOとして、組織と個人の展望
メディアマーケティングチームが今後目指す組織像があれば教えていただけますか?
上野さんチームとして戦略を立てましたが、実行の手前段階です。理想や机上の空論に留まらずPDCAサイクルを回すことに注力することが直近1年での目標です。
そこで結果を出すことができたら、他の施策の提案やマーケティングのインパクトを大きくしていきたいです。
NEXT CMOというコンセプトのもとご受講いただきましたが、どのように目標を据えていますか?
上野さんマーケティングイネーブルメント受講開始当初に、CMOになる!と宣言するツイートを投稿しました。
しかし、マーケティングイネーブルメントを通してマーケティングやCMOの役割について深く学び、業務に対する解像度が上がる中で、CMOになると軽々しく言うべきではなかったのでは?と心配していますが…
それでも言い続けることで形になると思っているので、積極的に社内でアピールして行きたいと思っています。
また、TABIPPOではこれまで積極的にBtoBのマーケティングに取り組んで来なかったため、手を上げて初期フェーズから戦略設計に携わること自体がチャンスだと感じています。BtoBマーケティング立ち上げの後にはBtoCマーケティング、そして新規事業と、自分の目指す方向にある長い階段をしっかり上っていけるような環境が整っているので、目の前にある課題に丁寧に集中して取り組みたいと考えています。
上野さんの大きな目標に向けて、浦川さんからの期待をお聞かせください。
浦川さん小さくてもちゃんと狙った結果を出すことと、将来の期待感が持てるような再現性のある結果が出るといいかなと思っています。
自身が新卒1年目の頃に経験した業界特有の技術や知識、ニッチなノウハウをしっかりストックしていくことで、半年後や1年後にTABIPPOなりのマーケティングの勝ち筋をリアルに語れるようになっていくと思います。
そうすることで、CMOへの恐縮もなくなり、自信に繋がるのではないでしょうか。この1年は上野さんの成長に期待したいと思います。
上野さん、浦川さん、素敵なお話しをありがとうございました!
マーケティング組織づくりのヒント
今回のTABIPPO様とのプロジェクト、及びインタビューから、マーケティングの組織づくりに関するポイントとなる点をお伝えします。
- 経営とマーケティングをつなぐことを前提にマーケターの役割やミッションをつくる
- マーケティング戦略策定と業務設計は同時に行い、絵に描いた餅にならないようにする
- 組織で戦略に関する共通認識を合わせるためにフレームワークをフル活用する
(しかし、フレームワークは組織文化に合わせてカスタマイズが必要)
マーケティングイネーブルメントでは、今後もNext CMOを育成し、マーケティングの力を活かせる組織を増やすために、プログラム・ノウハウ発信を強化していきます。
サービス紹介「マーケティングイネーブルメント」
未来のマーケティング責任者にあたる“Next CMO”を育成し、マーケティングの成果創出に向けた組織基盤を構築するためのプログラムを提供します。約3ヶ月のプログラムを通じて、マーケティングの全体設計と、Next CMO候補の方が戦略設計と実行ができる仕組みを構築します。Next CMOに必要な6カテゴリーを講義形式でお伝えします。また、講義後に毎回アウトプットを出してもらい、メンターがフィードバックを出しながらプログラムの中でマーケティング業務・戦略・計画を作り込みます。