部署のビジョンは、単なる目標設定ではありません。
それは、チーム全員が共有し、向かうべき明確な未来像を示すコンパスのような存在といえます。
しかし、「本当に効果的なビジョンって具体的にどんなもの?」そんな疑問を抱える部署リーダーやマネージャーは少なくありません。
効果的なビジョンが組織文化に根付くことで、部署の成長はもちろん、個々のメンバーのモチベーション向上にもつながります。
この記事を通じて、部署が目指すべき明確な方向性を見出し、ビジョンを基にした実現可能なステップを踏み出すための一歩としましょう。
この記事でわかること
- 部署やチームのビジョンを策定するための具体的なプロセス
- 何が効果的なビジョンを形作るのか、また、そのようなビジョンがチームの行動や結果にどのように影響するかの例
こんな人におすすめの記事です
- 新しいプロジェクトや部署のリーダーシップを任されたばかりで、チームを導くための明確なビジョンを策定したいと考えている人々
- 既存のチームや部署で効果的な変化を引き起こし、部下の士気を向上させたい中間管理職の人々
全国のビジネスパーソン約3,000名を対象に「ブランディング意識調査」を実施。課題や傾向が分かる『調査レポート』 + 課題に対する『実践ガイドブック』を無料配布中!
ビジョンとは:部署の未来像を定義する
部署の未来像を定義するビジョンとは、『その部署が将来どのような状態を目指しているのか』『どんな価値を提供し、何を成し遂げたいのか』という明確な描写や方向性を示した宣言です。
ビジョンは単なる目標設定以上のものであり、部署のメンバーに共通の目的意識を与え、モチベーションを高める指針となります。
ビジョンの基礎理解
ビジョンの基礎理解として、その役割と特徴を以下に挙げます。
ビジョンの役割
方向性の提供:
ビジョンは、組織や部署が目指すべき方向を示します。
これにより、組織内のすべての人が共通の目標に向かって努力できるようになります。
意思決定の基盤:
ビジョンは、戦略的な意思決定のための基盤を提供します。
新しいプロジェクトや施策がビジョンと一致しているかどうかを考えることで、意思決定が容易になります。
モチベーションの向上:
従業員は、共有されたビジョンに触発され、より大きな目的感を持って仕事に取り組むようになります。
一体感の醸成:
共有されたビジョンは、組織内での一体感やチームワークを強化します。
これにより、個々のメンバーは組織全体の一部としての自己認識を強く持ちます。
ビジョンの特徴
明確性:
効果的なビジョンは、明確で理解しやすいものでなければなりません。
誰もが簡単に理解し、覚えられるものであるべきです。
鼓舞性:
ビジョンは人を鼓舞し、情熱を持って働くことを促すものでなければなりません。
実現可能性:
現実離れした目標よりも、高いが達成可能な目標を設定することが大切です。
達成不可能なビジョンは逆効果となる可能性があります。
関連性:
ビジョンは、組織の業種や業務に適切であり、関連性がなければなりません。
長期的視点:
ビジョンは通常、5年から10年、あるいはそれ以上の長期的な視点を持っています。
ビジョン、ミッション、バリューの相互関係
ビジョン、ミッション、バリューは組織や部署の基本的な指針を形成する要素であり、お互いに密接に関連しながら組織の方向性を決定づけています。
ビジョン (Vision)
ビジョンは組織が将来達成したいと望む理想の状態を示します。
これは組織の「夢」や「理想像」と言え、長期的な目標を掲げることで、組織が目指すべき将来像を明確にします。
ミッション (Mission)
ミッションは組織が存在する目的、つまり「何のために存在しているか」を表します。
ビジョンを実現するために、組織がどのような役割を果たすのか、何をするべきかを定義します。
バリュー (Values)
バリューは組織が重視する価値観や信条、行動規範を示し、「どのようにして目標を達成するか」に焦点を当てます。
バリューは組織内の行動様式や意思決定プロセスに影響を与え、組織文化の基盤を形成します。
これらの要素の相互関係
ビジョンは目的地:組織が最終的に到達したい場所や成し遂げたいこと
ミッションは地図:その目的地に至るための経路や道しるべ
バリューはコンパス:旅の途中で道を踏み外さないよう、常に正しい方向を示してくれる道徳的な指針
このようにビジョン、ミッション、バリューのそれぞれの意味するところと、関連性を理解することが重要と言えるでしょう。
全国のビジネスパーソン約3,000名を対象に「ブランディング意識調査」を実施。課題や傾向が分かる『調査レポート』 + 課題に対する『実践ガイドブック』を無料配布中!
部署ビジョン策定のプロセスとステップ
ビジョン策定のプロセスは、組織や部署の現状分析から始まり、理想の未来像を具体的に描き、その実現に向けたステップを定めることで進行していきます。
現状分析と目標設定の連携
現状分析と目標設定は戦略的計画において不可欠であり、両者の連携は組織が成功に向かうための道筋を定める上で極めて重要です。
現状分析
現状分析は、組織が「今どこにいるのか」を理解するためのプロセスです。
これには次のような要素に着目して分析する手法が有効です。
SWOT分析:
Strengths(強み):
組織が持つコアコンピテンスや競争優位点
Weaknesses(弱み):
組織が改善すべき領域やリソースの不足
Opportunities(機会):
市場の変化や技術革新など、組織が活用できる外部環境の要因
Threats(脅威):
競争の激化や規制変更など、組織にとって不利な外部環境の要因
目標設定
目標設定は「組織がどこに向かいたいのか」を定めるプロセスです。
目標設定の際に用いられる一般的なガイドラインにSMART基準があります。
SMART基準:
Specific(具体的):
目標は明確かつ具体的であるべきです。
何を、どのように、いつまでに達成するかをはっきりさせることで、目標が達成可能なものになります。
Measurable(測定可能):
目標の進捗状況や達成度合いを測定できるように設定されていることが重要です。
これにより、目標達成のための進捗管理が可能になります。
Achievable(達成可能):
目標は現実的かつ実現可能であるべきです。
過度に高い目標は達成が困難であり、逆に低すぎる目標はモチベーションを下げる可能性があります。
Relevant(関連性):
目標はその人や組織の大きな目的や価値観に合致している必要があります。
関連性のある目標は、より意欲をもって取り組めます。
Time-bound(時間的制約):
目標には期限が設定されている必要があります。
これにより、具体的なスケジュールに沿って計画を進められます。
このようにして、現状を正しく分析し、組織が一丸となって取り組める目標を設定するのがポイントとなります。
部署ビジョン策定プロセスのコツと注意点
それでは実際に部署のビジョンを策定するプロセスを解説します。また、その際のコツと注意点についても紹介するので参考にしてください。
ビジョン策定プロセス
①現状分析:
SWOT分析を実施して、組織の強み、弱み、機会、脅威を特定します。
また、それを基に組織の核となる基本的な信条や価値観を定義します。
これらはビジョン策定の基盤となります。
②使命の定義:
組織のミッションステートメントを作成します。
これには組織の目的、目指す市場、提供する価値を明記します。
③理想の未来像の設定:
長期的な理想の状態を描き出します。
これは、組織が未来に何を達成したいかを表すビジョンステートメントになります。
④戦略的目標の設定:
ビジョンを実現するための戦略的目標を設定します。
これには、明確な成果指標や時限が伴います。
⑤アクションプランの策定:
具体的なアクションプランを策定し、それを遂行するためのリソースやプロセスを明確にします。
⑥コミュニケーションと共有:
策定したビジョンを組織全体にわたって共有し、全員が理解できるようにします。
⑦実施とモニタリング:
アクションプランを実行し、進捗状況を定期的にチェックして、必要に応じて計画を調整します。
⑧評価と修正:
ビジョンに向かっての取り組みを評価し、現実に即していない場合はビジョン自体や取り組み方を修正します。
このように、現状分析に始まり、具体的なビジョンや戦略を策定、最終的には実行とその評価まで行うのが一連の流れとなります。
コツと注意点
コツと注意すべき点は以下の通りです。
- ビジョン策定には、組織のリーダーの意見だけでなく、幅広いステークホルダーの意見を取り入れるべきです。
- ビジョンは抽象的すぎず、かつ十分に野心的でなければなりません。
- 実現可能で具体的なビジョンが、モチベーションを高め、実行可能な行動計画へと繋がります。
- ビジョンは定期的に見直し、現実の変化に合わせて更新する必要があります。
ビジョンは経営者や一部の社員しか共感できないものであったり、実現可能性が低いとむしろ組織全体の士気を下げてしまう可能性もあるので、紹介したコツと注意点を意識すると良いでしょう。
全国のビジネスパーソン約3,000名を対象に「ブランディング意識調査」を実施。課題や傾向が分かる『調査レポート』 + 課題に対する『実践ガイドブック』を無料配布中!
組織のビジョン実例
部署ビジョンは、それぞれの部署の将来像を示しており、メンバーに方向性を与えるための指標となります。
実際の企業では、それらのビジョンが部署の現状分析、戦略的優先順位、そして部署の能力とリソースに基づいてさらに具体化されます。
グローバル企業の事例紹介
グローバル企業での会社ビジョンの事例をいくつか解説します。
Googleの研究開発部門
「ワンクリックで世界中の情報にアクセスできるようにする」
Googleはそのビジョンで知られていますが、研究開発部門はこの大きな目標に沿って、画期的な技術やサービスの開発に力を注いでいます。
トヨタの製造部門
「トヨタはお客様に選ばれる企業でありたい。トヨタをお選びいただいたお客様に、笑顔になっていただける企業でありたい」
トヨタは品質と効率の追求を通じて、持続可能な社会に貢献するというビジョンの実現を目指しています。
紹介した成功例を自社のビジョンに落とし込み、部署やチームビジョンとして作り込んでいくこともよいでしょう。
組織ビジョンの活用事例
ブランディングテクノロジー社ではリブランディングの取り組みで、本体のブランドを軸に各グループ社のユニット、ブランディングテクノロジー社の事業部ひとつひとつにミッション、ビジョン、バリューを設定しました。
これにより採用面では、各グループ会社、ブランディングテクノロジー本体の事業部それぞれ細分化した採用活動が可能となりました。
ユニットごとにミッション・ビジョン・バリューの発信、カルチャーや制度を発信することで、求めている求職者の採用に成功しています。
本取り組みの詳細については、「ブランドファースト」経営の考え方と実践事例の記事を是非ご覧になってみてください!
部署ビジョンの効果的な伝達と浸透
ビジョンの効果的な伝達と浸透には、戦略的なコミュニケーション計画が必要です。
以下に、伝達のためのビジョンの構築法とビジョンを組織文化に根付かせる方法を解説します。
伝達のためのビジョンの構築法
ビジョンの伝達においては、そのビジョンがどのように構築されているかが重要です。
伝達に適したビジョンを構築するためには、以下のステップが効果的です。
ステップ1:参加と共感の促進
組織の異なるレベルのメンバーを巻き込んでビジョンを作り、多様な視点を取り入れます。ビジョンがステークホルダーに共感され、共有される価値観を反映するようにします。
ステップ2:明確さと理解の確保
ビジョンが具体的で、明確な言葉で表現されていることを確認します。専門用語を避け、誰にでも理解しやすい形でビジョンを伝えます。
ステップ3:インスピレーションと動機付け
ビジョンは、従業員が自分たちの仕事に意義と目的を見出すのに役立つようなものでなければなりません。組織の使命と将来の展望を結びつけ、ポジティブな影響を与えるビジョンを作ります。
ステップ4:組織の核となる価値との整合性
ビジョンは組織の基本的な価値観や文化と一致している必要があります。組織の根底にある信念や哲学をビジョンに反映させます。
ステップ5:目標との連動
ビジョンが具体的な戦略や目標につながるようにします。短期的な目標と長期的なビジョンが一致していることを確認します。
ステップ6:コミュニケーション戦略の策定
どのようにしてビジョンを組織内に伝達するか、効果的なコミュニケーションプランを策定します。ストーリーテリング(物語形式の技術)やビジュアルエイド(視覚支援ツール)を活用してビジョンのメッセージを強化します。
ステップ7:フィードバックと対話
フィードバックメカニズムを設けて従業員の意見や感想を聞き、ビジョンの改善に活かします。定期的なミーティングや対話を通じて、ビジョンに対する理解とコミットメントを評価します。
ステップ8:ロールアウトと継続的な評価
ビジョンをロールアウト(段階的な導入)し、組織内のさまざまなレベルでの理解と適応を進めます。定期的にビジョンの適応度や影響を評価し、必要に応じて微調整します。
ビジョンを組織文化に根付かせる方法
ビジョンを組織文化に根付かせるには、そのビジョンが組織のあらゆるレベルで共有され、理解され、受け入れられる必要があります。
以下に、そのための方法をいくつか解説します。
経営層のコミットメント:
経営層はビジョンを絶えず語り、それを組織文化の核として扱わなければなりません。彼らの行動と決定がビジョンに基づいていることを明確に示すことが必要です。
教育とトレーニング:
新入社員はもちろんのこと、既存の社員に対してもビジョンについて教育することで、それが日々の業務にどのように反映されるべきかを理解させます。
ストーリーテリング:
ビジョンを物語(ストーリー)として語ることで、従業員に感情的なつながりを感じさせ、記憶に残りやすくします。
まとめ:ビジョンを中心に部署の成長を促進させよう
明確なビジョンを設定し、それを戦略と具体的な行動計画に結びつけることで、組織文化の強化と部署の発展を図りましょう。
ストーリーテリングやビジュアルエイドを活用してビジョンを伝達し、全員が共有する目標に向かって進むことで、持続可能な成果を実現できます。
ブランディングテクノロジー株式会社では、顧客リサーチや業界研究から導き出したエビデンスをもとに、ノウハウを体系化した資料を無料でダウンロードいただけます。
また、中小企業様ならではの課題に対し、目的や業界別にオンラインセミナーを開催しております。
全国のビジネスパーソン約3,000名を対象に「ブランディング意識調査」を実施。課題や傾向が分かる『調査レポート』 + 課題に対する『実践ガイドブック』を無料配布中!